【映画】『グランツーリスモ』めちゃ好き長文レビュー

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9/15公開をこの11月の頭に観に行くというテンポの遅さは、

上のリンクを貼るべく開いた公式サイトが

上映ティザーの流れない配信&ソフト類の案内ページだったことでも

噛み締めております。


いやでも、最高だった……。まだの人ほんとに観てほしい。


映画『グランツーリスモ』とは

PS系向けゲーム『グランツーリスモ』がクッソ上手い、

子供の頃から車が大好きながら進学せず現在バイト生活、

大学へ行くかとにかく勤めに出るかを親に求められるヤン。


ボンボン臭のする、態度の悪いレーサーが在籍するチームで燻っている、

エンジニアのジャック。


人生のギアが噛み合っていなかった二人が

胡散臭い英国日産マーケターのダニーが手がける

「ゲーマーをレーサーにする」企画により大舞台へと走り出していく、

実在人物・プロジェクトベース、ドリームフィクション。


以下、ほぼネタバレなしでお送りしますが

うっすらあらすじぐらいは踏んでいる可能性があるので

何も情報を入れたくない人はご注意ください。


満足ポイント①:ストーリーテリング

根性論すぎず、しかし夢物語がないわけでもなく

前評判で「スポ根」という話を聞いていたので

唾棄すべき根性論や鬼トレーニングが展開されていたら辛いな、と思いましたが

杞憂でした。現代の、欧米の正しいスポーツマンシップ


フィジカルが弱ければ特訓をする。

気の合う仲間もいればそうでないライバルも、ダーティーな奴もいる。


そういう語りやすい相手が揃っているというところが

フィクションらしくもあり、

同時に自分たちとは遠いところにありながらも

同じ地平線上に彼が「いた」という不思議な真実味をこの映画に与え、

強く支えていたように思います。

アカデミー時代のブレーキの話が一番ドリームかな……!


暴言少なめ

なんかゲーマー四面楚歌みたいな話も聞いていたのですが、これも杞憂。

ちくっと言われはしますが見ている人の心に優しいエンタメぶり。

匙加減してくれた人ありがとう。


再起の語り口

ベッドで泣き出すヤンのシーン以降からのストーリーラインが胸熱。

人間ドラマからコースと車の美しさまで全て見せてくるし、

ここで、こう、彼らのストーリーになるのが! ね!!!

(ネタバレを防ごうとしてろくろを回しています)


満足ポイント②:俳優

オーランド・ブルームの胡散臭いマーケターぶりよ!

噛めば噛むほど味が出る。出てない?


ヘラヘラ笑顔で陽気に企画を引っ張りつつ、

きっちりそろばん勘定をして時に一歩置いた立場をとりながら

それでもどこかで彼らとチームであろうとする。


その人間味がすごかった。他の作品も見てみたくなりました。


デヴィッド・ハーバーの笑顔が渋すぎる

もっとキレッキレの圧政かましてくる鬼監督かと思ったけど

キレが良かったのは毒舌だったエンジニアおじさん・ジャック。

毒舌を繰り出す時の笑顔が最高にいぶし銀。


あとクライマックス後の喜び方がカッコつけてなくてめちゃくちゃ良かった〜。

これはそういう本にしたということ自体もなんだけど、

それをきっちりやってのけたのがまた。


もちろんアーチー・マデクウェと、物語的上微妙だった彼女も

ジャックおじさんが良かったので語られることが少なめなんですが、

少し陰気なギャップイヤーの男の子がいい顔になっていくんですよ。

映画の中で成長している、素晴らしい演技でした。


あと雑な挟まれ方をした恋愛模様の彼女役の子(検索しても出てこない!)も

地味オシャ(レ)大人かつ興味と好意だだ漏れで、

別のことを描くための踏み台ヒロインではあったけれど

トロフィーガールではなくて良かったです。


満足ポイント③:画

ニュルが最高に気持ちいい

車好きの話を聞いているぐらいの私でも知っている

ニュルブルクリンク北コース(という厳しくて有名なコースがあるのです)。


森の木が、そこを抜けた先でコースへ注ぐ光が、

うっすらとかかる霧が、そこを走る車が。

映るもの全て美しい。


レースシーンでは走る車を追うのではなく後ろに下がっていくカットなど

感覚の逆を突かれるような画もありましたが、

ピットの熱気やエンジンの機構といった熱さも映し出しつつ

「美」がきちんと切り取られていて震えました。


だってこれは『グランツーリスモ』の映画、そうだろう?

時折モーションがストップして入る順位などに

違和感を覚える鑑賞者もいたみたいだけれど、うーん。


確かに映画の中でヤンも言っている通り『グランツーリスモ』は

ゲームではなくレーシングシミュレーター。


でもゲーム機であるPlayStationを主戦場として

サービスを提供してきたことも事実で。


あの順位表示自体がゲームリスペクトあって良かったと思うし、

ストップモーションは上がりすぎる熱気に一呼吸する隙を与えてくれて

むしろありがたかったです。


満足ポイント④:音

実は音響の良い映画館で贅沢してきた

本日のチケットはこちら!


よんせんごひゃくえん


行けそうなところだと舞浜イクスピアリでもやっていましたが、

諸々コスト考えると+1,000円ぐらいだったので

社会見学も兼ねて行ってみました。


行くまでの歌舞伎町界隈がアレだけど、映画館自体はノーストレス。

綺麗だし大人の余裕があって落ち着いて映画を見られる空間で、

割と映画外のことに気を取られがちな私にとってはとても良かったです。


何より音響が故・坂本龍一氏監修という冠が与えられているだけあって

めちゃくちゃ、めっっっっちゃくちゃ良かった……。本当に良かった。

もう一回言わせて、マジで良かった。

東宝ゴジラ側からではなく西武新宿側から入るのが動線としても混雑対策としても正解。


エグゾースト!

その良さを遺憾なく発揮して響くエンジン、エグゾースト、車に関する爆音。

多分車ファンは痺れるし、他の映画館ではもうほぼ終映しているのに

未だ都心一等地のここでかかっている(し、席もいい埋まり具合してた)理由も

そこにあるんじゃないかと思っています。


懐かしい音楽たち

エンヤにケニー・G。わ〜、懐かしい〜! めちゃくちゃ音いい〜!!!

ヤン、若いのに渋い趣味してんな、と思ったけれど

よくよく考えたら過去の実話でしたね。

ル・マンの「ラ・マルセイエーズ」も地味に最高でした。

ああいうフランスらしい伝統があるという事実も面白かったです。


誰かと自分のチャンス作っていこうぜ!

社会派映画ももちろんいいんですよ。豪速球で刺さりますし。

あるいは、ファンタジーフィクションも。物語はいつでも楽しい。

「そうはならんやろ!」と言わずにはいられない

怒涛のストーリーテリングがなされる作品も。


グランツーリスモ』はそうじゃない。

そうじゃないからいまいち流行らなかったのかもしれない。


自分の周囲で頑張ることが冷笑されたり

ニュースや映画作品でも格差をはじめとする問題が強調される中、

ビジネスマーケティングとはいえ誰かのチャンスを作った人がいて

そこから成功した人がいる。実際に、そうやって夢を掴んだ誰かがいる。


そこが個人的には激アツでしたし

マネタイズ以上に人に焦点を当てて描いているということにも励まされました。

「今時夢っすかw」「もっと真剣に問題に取り組め」的な考えを、

あるいは「ビジネス的にどぎつい裏話ないの?」という週刊誌的観点を、

実在の人物ベースのフィクションで豪快に殴ってくれる。


頭悩ませるのもいいけどやってみたら面白そうなことで

自分と誰かのチャンス作っていこうぜ!

というマインドを素直に思い出させてくれる一作。観て良かった。


首都圏であれば記載の通りお高いけど109シネマズプレミアム新宿か、

あるいはイクスピアリでまだかかっています。

個人的には是非大枚叩いていただいて新宿へ足を運ぶことをおすすめしたい!

配信も来ていますが、せめて、

お手持ちの中で一番良い音のする音響機器でどうぞ。


好きすぎて長くなってしまったけど最後まで読んでくれた人ありがとう。

もう一度観にいこうかどうか本気で迷っている北国でした。ではまた。