【映画】『リバー、流れないでよ』ゆるゆるドタバタ群像劇
面白かった。面白かったんです。
評判通り、2分間の繰り返しがこんなに多彩になるなんて。
しかし下手に書くとネタバレになってしまう……。
そんな苦悩を抱えつつ、そうっとそうっと感想を書き留めようと思います。
「リバー、流れないでよ」
寒くても参拝客の訪れるこの地で、
神社近くの老舗料理旅館「ふじや」の面々は昼の営業を終えようとしていた。
しかし襲う既視感。引き上げられない徳利。減らないおじや。
どうやら2分間、タイムループをしているようで……!?
記憶はあるけれど抜け出せない、不思議におかしい群像劇が始まる。
派手ではない、小劇場らしい秀作
大阪近辺で小劇場をちらほら観ていましたが、
不思議と縁がなく<ヨーロッパ企画>の講演は観たことがありませんでした。
彼らの元祖タイムトラベルもの、「サマータイムマシン・ブルース」も
「ぐだぐだな大学生たちが面白い」という評を聞きつつも
やっぱり舞台で見たい気持ちが強く、録画媒体に手が伸びず。
満を持しての本作の鑑賞、ニヤニヤしっぱなしでした。
2分間の、変態的な回数の変奏
2分間のタイムループもの、と聞けば
飽きてくるんじゃないの? と思いきや、意外にいける。
というより、飽きる頃に味付けが変わる! 味変がすごい!
手変え品変え、2分間のテーマを絶妙にずらし、
それでいてその前のループとちゃんと連続して語ること、
20? 30? とにかくえらい回数。
個人的には序盤一通り関係者の描写が済んだあたりで
飽きてきたかも……と思ったところで主役のみことちゃんにぶっ込まれ、
戸惑ったりキュンしたり吹き出したりずっこけたりしながら
あれよあれよとエンディングまで流されました。
役の濃い味を楽しめるか否かが作品を楽しめるか否かを分ける
キャラが濃いから演じ方が濃くなり、
ともすれば滑っているのでは? という小ネタが挟み込まれるのは
小劇場の運命かもしれません。
私はそのあたり割と楽しめるけれど、リアリティを求める人は苦手かも。
個人的にはそれぞれのキャラクターに愛着が湧きました。
初期位置を叫ぶミコトちゃん、序盤でパニクりキレるチノさん、
雪の坂道で前を歩むタクくん、こいつは人がいいぞと思わせる番頭さん、
人はいいけどズレもすごい料理長(なんだよ終盤「もっと腰入れろォイ」て)、
料理人以外としてもめちゃくちゃ有能疑惑のエイジさん、
貴船の気候のように晴れたり曇ったり凍ったりのノミヤさん&クスミさん、
オバタ先生以外には剛腕振るいがちスギヤマさん、
皆の肝を潰し目を覚まさせる猟師さん、
一気飲みの威勢もいいぞ女将さんにとんだ参拝になったヒサメちゃん、
そしてループし始めてから一番幸せそうだったオバタ先生。
それぞれに名場面が思い浮かんで、その度に楽しい気持ちになる。
カテゴリとしてはSFなのでしょうけれど、
出てきた役全部が印象に残るあたり「群像劇」と付けたいし
その部分も強く推したい気持ちになりました。
休日の朝にゆるっと楽しむのに最適
面白さにも「画面」「ストーリーテリング」など色々種類がありますが、
本作は静かな京都の冬の小範囲でまったりドタバタする話でした。
(ハリウッドのドタバタよりもうちょっと小さくモタモタしてる感じ)
休日の朝、なんっか観たいけど感動大作とか派手な画面じゃないんだよな、
という時にぜひお勧めしたい一本。
未配信だけどU-NEXTにそのうち来るといいな〜。
2023/11/04 下北沢トリウッドにて鑑賞